2025年9月に全国の最低賃金の引上げが発表され、10月1日より順次適用が開始されます。全国加重平均で1,121円(前年比66円増、6.3%上昇)という過去最大の引上げ幅は、多くの中小企業経営者にとって大きな経営課題となっています。
この最低賃金引上げに対応するため、厚生労働省と経済産業省から各種支援策が提供されていることをご存知でしょうか。適切な支援策を活用することで、賃上げ負担を軽減し、可能であれば生産性向上につなげる機会として捉えてみても良いかも知れません。
• 全国加重平均:1,121円(66円増、引上げ率6.3%)
• 過去最大の引上げ幅
• 全都道府県で10月1日より順次適用開始
支援策の全体像:助成金と補助金の違いを理解する
最低賃金引上げ対応の支援策は、大きく2つの省庁から提供されています。それぞれの概要について以下簡単に記載します。
各省庁の違い
助成金(給付型)
要件を満たせば受給
補助金(競争型)
審査による選定
| 区分 | 厚生労働省の助成金 | 経済産業省の補助金 |
|---|---|---|
| 性質 | 給付型(要件を満たせば受給可能) | 競争型(審査による選定) |
| 主目的 | 賃上げそのものの支援 | 設備投資による生産性向上 |
| 賃上げとの関係 | 賃上げが必須要件 | 賃上げは加点・優遇措置 |
厚生労働省の助成金:確実に活用できる給付型支援
業務改善助成金の拡充活用法
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行った場合に、その費用の一部が助成される制度です。今回の制度拡充により、対象範囲が大幅に拡大されました。
【今回の大幅拡充内容】
- 対象範囲拡大:事業場内最低賃金額が「改定後の地域別最低賃金未満」まで拡充
- 高率助成:3/4~4/5の助成率(通常より優遇)
- 手続き簡素化:最低賃金改定日前日までの賃金引上げ完了で事前提出不要
- 問合先:都道府県労働局雇用環境・均等部、業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
非正規雇用労働者の処遇改善を目的とした助成金で、基本給を3%以上引き上げることで利用可能です。最低賃金改定に伴う賃金規定等の改定も対象になります。
【助成額一覧(令和7年度)】
| 賃上げ率 | 助成額 |
|---|---|
| 3%以上4%未満 | 4万円 |
| 4%以上5%未満 | 5万円 |
| 5%以上6%未満 | 6万5,000円 |
| 6%以上 | 7万円 |
経済産業省の補助金:賃上げ特例による優遇措置
IT導入補助金、ものづくり補助金、省力化投資補助金では、最低賃金引上げの影響を受ける事業者に対する特例措置が大幅に拡充されました。
主要な補助金制度と優遇措置
• 補助率:通常1/2 → 最低賃金特例で2/3に引上げ
• 審査優遇:賃上げ企業を優先採択
• 補助上限:IT450万円、ものづくり4,000万円、省力化1億円
• 基本補助額:50万円
• 賃上げ特例:+150万円上乗せ(計200万円)
• 補助率:2/3(赤字企業は3/4)
• 中小企業:賃上げ額の最大45%を税額控除
• 赤字企業も5年間繰越控除で利用可能
最低賃金引上げ特例の要件緩和
従来の「地域別最賃+50円以内」から「改定後の地域別最賃未満」に要件が緩和され、対象企業が大幅に拡大されました。該当する事業者は補助率が1/2から2/3に引き上げられ、審査においても加点措置が適用されます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路開拓支援として、通常50万円の補助上限に対し、賃上げ特例を活用すれば150万円の上乗せが可能です。
実際の活用時の注意点とタイミング
支援策を効果的に活用するためには、以下の点に注意が必要です。
- 複数制度の組み合わせ活用:助成金と補助金は併用可能(同一設備への重複利用は不可)
- 申請タイミングの管理:厚労省系は随時受付、経産省系は公募期間を要確認
- 事前準備の重要性:特に補助金は事業計画書の質が採択を左右
- 継続的な取組み:一時的な対応ではなく、持続的な生産性向上の視点が重要
相談窓口とサポート体制
支援策の活用において、適切な相談先を知っておくことは極めて重要です。
• 厚労省系助成金:都道府県労働局、働き方改革推進支援センター
• 経産省系補助金:よろず支援拠点、商工会・商工会議所
• 取引適正化:下請かけこみ寺(フリーダイヤル:0120-418-618)
まとめ
最低賃金の大幅引上げは確かに経営への負担となりますが、適切な支援策を活用することにより企業成長の機会として捉えることもできるのではないでしょうか。また価格戦略の見直しと生産性向上を組み合わせることで、持続可能な収益構造の構築の可能性にも期待することが出来るかも知れません。
当事務所では、これらの支援策活用を含めた総合的な経営改善支援を行っております。価格戦略を軸とした収益向上と、各種支援制度の効果的活用により、企業の持続的成長を支援しております。